2016-01-01から1年間の記事一覧

人、物、場所(2)

人と人ならざるものの間に融けて、溶けて、解けて。私は僕は俺はあたしはわたしは。人で在りながら人でないからものを望んだ。 それはいつも其処に在った。此処と其処の境界線など知らない。ただいつも其処に在る。否定しようとも。 本当に?本当に居てくれ…

人、物、場所

様々な雑貨の並ぶ職場。春には寄せ書き、夏には向日葵や西瓜、秋には手帳、冬にはクリスマスカード。それらの注文が始まれば、肌がどう感じようと、頭はその季節に切り替わった。 様々な人達のいる職場。寂しがり屋な所長の計らいで度々開催される〇〇飲み会…

氷の君

薄く張った氷のように、私の表面には壁があるらしい。透明だけれど確かに存在していて、薄いくせに冷たくて固いのだとか。簡単に壊れてしまいそうで、ずっと在り続けるそれは、私の一部と言えるのか。「世間」に貼り付けられた印象なのか。 ぺたりと自分の頬…

前髪、餃子、SNS

「SNSでさー、最っ高に素敵な彼と知り合ったのよー」 『へー。』 「へーって何よ。もうちょいきょーみ持てよー」 『どーせ会いに行ってもっと惚れて寝たとかって話でしょー?あんた、もっと自分のこと大事にしなよー。』 「うっせ。どーせブスだし手に入んな…

誕生日、蛍光、方法

彼女が死んだ。誰にも言わないまま、独りでソレを選んだ。当然俺にも言わなかった。 合鍵を使って彼女が住んでいたワンルームに入る。玄関を開けて、電気をつけながら短い廊下を通り、ベッドと本棚しかないような狭い部屋へ。ベッドの上には俺がプレゼントし…

暗殺、天使、絵

いつのことだったか。青い月の夜に君は突然現れた。とても弱くて寂しい君は、助けを求めて僕に手を伸ばす。僕はその手を取った。 求められるまま言葉を落とす。今日はどんな言葉を贈ろうか。どんな言葉で君を飾ろう。君を揺らそう。 ねえ君。笑ってくれるか…

塩、機関銃、蝋燭

暗闇の中、蝋燭の明かりを頼りに進む。自分の足音以外の音はない。私は人だったものを破壊する。その為にここへ来たのだ。 肩から下げた機関銃が重い。借り物だ。大事に担ぎ直す。 見知った家の廊下を進む。ドアを開ける、蝋燭で照らす。その繰り返し。大き…

個体値、神社、プラスチック

気付けば、白いイチョウの木の上で脚をぶらぶら、座っていた。見下ろせば青い鳥居。地面がある筈の場所は暗く、底が知れない。見上げた空はまだ決まっていないようで、赤、青、緑と少しずつ色が変わっていく。 ここは?そう呟いたはずの声は無く、代わりに口…

太陽、街、セロハン

娘の中学の美術の授業でステンドグラスを作ることになったそうだ。 ステンドグラスとはいえ、もっと簡易なもので、黒い大きな画用紙を切り取り、間に色の付いたセロハンを貼るというものらしい。12月のマーケットに飾る予定だったのもあり、大抵のクラスメイ…

ロボット、虫、CD

真っ黒で四角い箱のような家の大きな窓の傍。そこにゆったりと椅子に座る少年が居る。ここ数日、私は彼を観察していてわかったことがあった。彼は人ではない。では何なのか。私はそれを表す言葉を知らない。ただ彼は老いた女性が持ってくる丸くて平たくてキ…

黒人、ショートケーキ、マスキングテープ

「だからね、私は黒には白だし、白には黒が似合うと思うのよ!」 突然声を張り上げた彼女の口元には、間抜けにもコッテリとした生クリームがへばりついている。黒いスポンジに真っ白な生クリームの塗られたそれを、大して美味しくもなさそうにまた口に運ぶ。…

ティッシュ、カッパ、校庭

何だか真っ直ぐ家に帰りたくなくて、図書室で時間を潰していた僕は、ふと窓の外を見た。 雪だ。そしてくるくると回る小さな影。 まだ遅くないとはいえ、高校に小さな子が来るなどと、何か理由があるのだろう。 丁度いい暇潰しだと外に出る。 校庭の真ん中辺…

冬の終わりに君は哭く(仮)

少し歩こうか。白い息と共にそう言った彼女の背に、髪の長い女が垂れかかる。あれは冬だ。彼女を連れていこうとする、綺麗な魔の遺物。世界が終わり、また生まれたというのに、たったひと欠片遺ってしまった異物。冬は気に入った者を1人選んでは、雪の向こう…