2017-01-01から1ヶ月間の記事一覧

街灯、エプロン、煎餅

街灯のない暗い道をスマートフォンの明かりを頼りに歩く。仕事帰りにこの道を通るのももう慣れた。近道なのだ。 長く思えた道を歩き切り、冷えた手で鍵を探していると、ガチャリと音がしてドアが開く。「おかえりなさい」「……ただいま」広げられた腕に応えて…

瓶、ペン、音

星の詰まったキーホルダーを手に、君はうっとりと微笑む。それを横目に、僕は今手紙を書いている。夜色の液体にペン先を慎重に付け、想いを綴る。気持ちが文字から漏れていってしまわないよう、慎重に、慎重に。誰も口を開かない空間で、シャッシャッという…

冬の終わりに君は哭く(仮)2

冬を殺すのは案外簡単だった。 雪の降る早朝。まだ明るくなりきらないその時間に、彼女を海に連れ出す。まとわりつく冬も楽しそうだ。今だけは許してあげる。冷えた彼女の手を引けば、とても楽しそうに着いて来て、2人で服が汚れるのも構わず寄り添って砂浜…

赤く染まる

※気分を害する可能性があります。 鈍く光を反射する赤銅色の河の真ん中で、わたしはずっと立っている。ずっとがどれくらいずっとかは、とっくのとうに忘れてしまった。赤い水は膝より少し低い所まであり、お誕生日の真っ白なワンピースが赤く染まらないよう…

片思い、猫、燃え滓

しなやかなる獣を想う辛いときも、楽しい時も私は貴方を想う貴方に強く抱き締められると背筋が伸びて気持ちが良いそしてそっと頬を寄せるとても温かく、満たされる貴方が去る日を思うと心が寒く、燃え尽きたようになるのだそれでも私は貴方を想うどれだけ振…

林檎、ボール、帽子

何処までも続く真っ白な階段の上。上を見ても左右を見ても真っ白。そんな世界で、いつの間にか僕は座っていた。上には階段が続いていて、下にも階段が続いている。階段は左右に広く、端まで行ってみたら、崖のように途切れていた。 下を覗いていた時だった。…