人、物、場所(2)

人と人ならざるものの間に融けて、溶けて、解けて。
私は僕は俺はあたしはわたしは。
人で在りながら人でないからものを望んだ。

それはいつも其処に在った。
此処と其処の境界線など知らない。
ただいつも其処に在る。否定しようとも。

本当に?
本当に居てくれてる?
わからない。
ただ、其処に在ってと望んだだけなのかもしれない。
それでも、確かに在ったのだ。感じていたのだ。


私が悲しいとそれは哀しく微笑む。
私にはわからない言葉を、それでも一所懸命に投げ掛けてくる。

僕が嬉しいとそれは哀しむ。
楽しい僕はそれの言葉を受け取れなくなるからだ。

俺が怒りに苦しむとそれは見えなくなる。
きっと宥めようと背中に張り付いているのだろう。

あたしが泣くとそれは喜ぶ。
あたしがこれ以上苦しむことが無くなるからだ。

わたしが嘆くとそれは。
わからない。わたしはそれを感じたことがまだない。


それでも確かに在るのだ。
それはいつも無邪気に笑っている。
それはいつも楽しそうに、くるくると。
それはいつもこちらを気にしていて。

それに名前は無い。
名前を付けたらきっと、此処へ来てしまうから。
此処はとても苦しい。
だから其処で笑っていて。
其処で汚れなく。

 

それを閉じ込めたまま、僕らは生きる。
きっとこれからも。それからも。


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