しあわせ

1人の女の子が亡くなった。
彼女はいつも1人で、みんなから嘲笑われていて、世界を呪っていた。
世界なんてなくなればいいのに。人間なんてなくなればいいのに。私なんてなくなればいいのに。
私はそんな彼女の傍に居たかった。
でも彼女は、1匹の猫を庇って亡くなった。
 
 
 
1人の女の子に恋をした。
彼女はいつも傍に居て、困ったように笑っていて、ただ私に寄り添ってくれていた。
私はただ世界を呪って、人間を呪って、この命さえも呪っていた。
でもただひとつ、彼女の幸せを願ってしまった。
ある日1匹の野良猫に懐かれた。
ソレはまるで彼女の様で、こっそりと彼女と同じ名前を付けた。
どれだけ離しても擦り寄って、にゃあと鳴く、あなた。
可愛くないはずがないじゃない。
だから、私はあなたを見捨てられなかった。
世界がゆっくりと過ぎ去る中で、幸せな走馬灯なんて見られないと思っていた。この世に未練なんてないと思っていた。
でも、あなたが居たから。
記憶の中のあなたが困ったように笑うから。
私は世界を望み、あなたを望み、私の命を望んだ。
あなたのせいで、私は幸せだった。
 
 
 
世界の不幸せを望んだあなた。
あなたが守った命は今、私の腕の中で幸せそうに眠っている。
ざまあみろ。
そう呟こうとして、唇から嗚咽が漏れ出た。
腕の中の温もりが小さく身じろぎして、にゃあ、と鳴いた。