腕に咲く花

涙が止まらない。
腕を殴り付ける。
涙が止まる。
また、涙が出る。
また、腕を殴り付ける。
また、涙が止まる。
 
何度繰り返しただろう。浴室でひとり。
暖かな日差しも優しい月の光も届かない。
何もない、誰も居ない。
嗚咽を漏らして吸い込んだ白い湯気にむせる。
ああ、君がいたのか。
空を漂う白は消えていく。
またひとり。
ため息も出ない。
それでも涙は枯れないもので。
いっそこの水が何かを癒せればいいのに。
膝を抱えて震える。湯船にまた落ちていく。
自分の為に流れていく雫が、何だかとても醜く、とても汚らわしい。
 
腕を殴り付ける。
泣き止むまで繰り返し、繰り返す。
歯を食いしばり、嗚咽も叫びも噛み殺す。殺す。
助けて欲しかった。大丈夫だと、抱きしめて欲しかった。
知って欲しい。知らないで欲しい。
叶わない。叶わない。叶わない、何も。
それを選んだ。ひとりを選んだ。
誰にも迷惑はかけない。大切な人達に迷惑をかけない。
 
わたしはひとり。
踊る痣と共に。腕に咲いた花を友に。
 
次第に涙は出なくなって、泣きたくて泣きたくて種を撒くけれど、花は咲けども水は枯れた。
それを望んだのは。
願いは叶ったというのに、どうしてこんなにも虚しいのか。
こんなにも虚しいのに、どうしてだろう。
可笑しくて可笑しくて仕方がないの。