瓶、ペン、音

星の詰まったキーホルダーを手に、君はうっとりと微笑む。
それを横目に、僕は今手紙を書いている。
夜色の液体にペン先を慎重に付け、想いを綴る。
気持ちが文字から漏れていってしまわないよう、慎重に、慎重に。
誰も口を開かない空間で、シャッシャッという音だけが響く。
「書けたよ」
これは彼女に依頼された恋文。彼女から託された、彼女の想い人への気持ちが篭っている。
「本当?」
手紙をチラリと見た後、僕の目をじっと見詰めた。
それからブーツ特有の威嚇音を鳴らしながら近寄り、僕の手から手紙を勢い良く引き抜くと、そのまま後ろへ投げ捨てた。
「ちょっと……!」
同時に。
君が僕の唇を覆う。
それから暫く、僕はその温度と感触以外を知覚できなくなった。
なんてことだ。僕が綴った想いとは。
僕の胸に刺さったのは、恋の矢よりも鋭い、愛を綴った僕のペン。