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冬の終わりに君は哭く(仮)2

冬を殺すのは案外簡単だった。
 
 
 
雪の降る早朝。まだ明るくなりきらないその時間に、彼女を海に連れ出す。まとわりつく冬も楽しそうだ。今だけは許してあげる。
冷えた彼女の手を引けば、とても楽しそうに着いて来て、2人で服が汚れるのも構わず寄り添って砂浜に座った。
静かな朝だった。空気は痛いほど冷えていて、頭のもやも消えていく。
 
そうだ、クッキーを焼いたの。
そう言ってポケットから、ハンカチに包んだ少し割れてしまったクッキーを取り出せば、彼女は嬉しそうに口へ運ぶ。
人を疑うことのない、純粋で可愛くて綺麗なあなた。
ごめんね。これは仕方の無いことなの。
あなたを守るためには、こうするしかなかったの。
暫くすると私の太ももを枕にして、すっかり眠ってしまった。
穏やかな気持ちで頭を撫でてやると、頬を寄せてむにゃむにゃと笑う。
絶対に守ってみせるから。
 
起こさないようにそっと、太ももに感じる冷たい重みを下ろす。私が離れると、冬はまた愛おしげに彼女の頭を撫でる。
それを尻目に予め用意しておいた斧を取りに行き、ゆっくりと持ち上げ、彼女の首に勢いよく落とす。
止めようとしても無駄よ。だってあなたは生き物には触れられやしない。
彼女の首はとても細くて、 簡単に砕けた。
冬は明るくなり始めた空に高く高く哭いて、それから彼女と同じように砕けた。
 
 
 
冬は死んだ。
私は彼女との幸せな時間を守ったのだ。
彼女と共に生きるのは、私だけでいい。