ロボット、虫、CD
真っ黒で四角い箱のような家の大きな窓の傍。そこにゆったりと椅子に座る少年が居る。
ここ数日、私は彼を観察していてわかったことがあった。
彼は人ではない。
では何なのか。
私はそれを表す言葉を知らない。
ただ彼は老いた女性が持ってくる丸くて平たくてキラキラと光るモノを受け取ると、椅子から立ち上がってそっと開いた胸の中に収めて歌う。
彼の歌は時に優しく、時に激しく、聴いているととても良い気分になる。
私は彼を好いている。例え人じゃなくても。
それをどうにか伝えたくて通っているのだけれど、どうにも踏ん切りが付かない。
この気持ちを否定されるのがとても怖いのだ。
そうして悩んでいる内に彼は歌い終え、また胸からキラキラを取り出す。
取り出したソレを老いた女性に渡そうとして、落としてしまった。
思わず息を飲んだ私の前で、彼は女性に打たれて床に倒れる。
倒れた彼に出来損ないだとか、不良品だとか、耳を塞ぎたくなるような罵倒を浴びせ、そうして家から出て行ってしまった。
急いで窓の傍まで飛んで行き、彼の様子を窺うと、ガラス玉のような瞳の奥から暗い色の雫をこぼす。
彼は終わってしまったのだ。
私は悲しい気持ちと申し訳ない気持ちと湧き上がる暗い気持ちとを胸に、彼の頬にとまる。
ああ、私が人であったなら。
叶うことのなかったこの命を、せめて好きなように終わらせようと、彼に寄り添い眠りについた。