黒人、ショートケーキ、マスキングテープ

「だからね、私は黒には白だし、白には黒が似合うと思うのよ!」


突然声を張り上げた彼女の口元には、間抜けにもコッテリとした生クリームがへばりついている。
黒いスポンジに真っ白な生クリームの塗られたそれを、大して美味しくもなさそうにまた口に運ぶ。
「だからって何。さっきまで何の話もしてなかったと思うんだけど」
適当に相槌を打っていればいいものの、つい返事をしてしまう。
だから私はこの女と腐れ縁なのだ。切っても切れない仲なのだ。


迷惑にも私の手帳とペンケースを机から落とし、眺めていた雑誌をこちらに見せる。
中ではすらっと伸びた手足をこれでもかと見せびらかす、黒い肌の美女が、これまたカッコイイ上下黒のコーディネートを合わせて不敵に笑っている。
「これね?勿体ないじゃない!」
怒った素振りを見せつつ、ちっとも怒っていない私の友人は、先程乱暴に落とした私のペンケースを拾い上げ、白いレースのマスキングテープを取り出した。
それからうんうんと唸りながら、雑誌にテープを貼っていく。


空いた時間に、私はケーキを消費するとしよう。
イチジクの乗ったケーキは、口に運べばプチプチとした小気味よい食感と、爽やかな満足感を与えてくれる。ベタベタと甘ったるいこの女とは大違いだ。


口へケーキを運ぶ手を止めて半眼で眺めていると、がばりと顔を上げて破顔する。
「できた!どうだ、私の底力ー!!」
突き付けられたページに、真っ白なドレスを纏う黒い女性。これは、確かに。
思わずため息を漏らせば、満足気な顔。
「あんたのデザインじゃなくて、この女の人が綺麗だからだよ。調子のんな」


そう言ってデコピンすると、それにもまた満足気に笑う。


ああ、私はこの笑顔に弱い。
キツめの顔とキツめの性格。それでも彼女は恐れず向かってくる。
だから私はこの女と腐れ縁なのだ。切っても切れない仲なのだ。
その温かさに、私は幸せなため息を噛み殺した。

 

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