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冬の終わりに君は哭く(仮)

少し歩こうか。
白い息と共にそう言った彼女の背に、髪の長い女が垂れかかる。
あれは冬だ。彼女を連れていこうとする、綺麗な魔の遺物。
世界が終わり、また生まれたというのに、たったひと欠片遺ってしまった異物。
冬は気に入った者を1人選んでは、雪の向こうへ連れていってしまう。
今年は彼女なのだ。
どうして。よりによって彼女が。
冬はこちらを見て、こちらの先を観る。
それから満足気に笑って、彼女の頬を愛おしそうに撫でた。
それをただぼんやりと、まるで夢のようだと眺めていた。
本当に美しい光景だった。
私は彼女達に見惚れて、そして嫉妬した。
どうして死とはこうも美しいのか。

確か、その年の冬半ばのことだった。
私は憐れな遺物を殺した。