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街灯、エプロン、煎餅

街灯のない暗い道をスマートフォンの明かりを頼りに歩く。仕事帰りにこの道を通るのももう慣れた。近道なのだ。 長く思えた道を歩き切り、冷えた手で鍵を探していると、ガチャリと音がしてドアが開く。「おかえりなさい」「……ただいま」広げられた腕に応えて…

瓶、ペン、音

星の詰まったキーホルダーを手に、君はうっとりと微笑む。それを横目に、僕は今手紙を書いている。夜色の液体にペン先を慎重に付け、想いを綴る。気持ちが文字から漏れていってしまわないよう、慎重に、慎重に。誰も口を開かない空間で、シャッシャッという…

片思い、猫、燃え滓

しなやかなる獣を想う辛いときも、楽しい時も私は貴方を想う貴方に強く抱き締められると背筋が伸びて気持ちが良いそしてそっと頬を寄せるとても温かく、満たされる貴方が去る日を思うと心が寒く、燃え尽きたようになるのだそれでも私は貴方を想うどれだけ振…

林檎、ボール、帽子

何処までも続く真っ白な階段の上。上を見ても左右を見ても真っ白。そんな世界で、いつの間にか僕は座っていた。上には階段が続いていて、下にも階段が続いている。階段は左右に広く、端まで行ってみたら、崖のように途切れていた。 下を覗いていた時だった。…

人、物、場所(2)

人と人ならざるものの間に融けて、溶けて、解けて。私は僕は俺はあたしはわたしは。人で在りながら人でないからものを望んだ。 それはいつも其処に在った。此処と其処の境界線など知らない。ただいつも其処に在る。否定しようとも。 本当に?本当に居てくれ…

人、物、場所

様々な雑貨の並ぶ職場。春には寄せ書き、夏には向日葵や西瓜、秋には手帳、冬にはクリスマスカード。それらの注文が始まれば、肌がどう感じようと、頭はその季節に切り替わった。 様々な人達のいる職場。寂しがり屋な所長の計らいで度々開催される〇〇飲み会…

前髪、餃子、SNS

「SNSでさー、最っ高に素敵な彼と知り合ったのよー」 『へー。』 「へーって何よ。もうちょいきょーみ持てよー」 『どーせ会いに行ってもっと惚れて寝たとかって話でしょー?あんた、もっと自分のこと大事にしなよー。』 「うっせ。どーせブスだし手に入んな…

誕生日、蛍光、方法

彼女が死んだ。誰にも言わないまま、独りでソレを選んだ。当然俺にも言わなかった。 合鍵を使って彼女が住んでいたワンルームに入る。玄関を開けて、電気をつけながら短い廊下を通り、ベッドと本棚しかないような狭い部屋へ。ベッドの上には俺がプレゼントし…

暗殺、天使、絵

いつのことだったか。青い月の夜に君は突然現れた。とても弱くて寂しい君は、助けを求めて僕に手を伸ばす。僕はその手を取った。 求められるまま言葉を落とす。今日はどんな言葉を贈ろうか。どんな言葉で君を飾ろう。君を揺らそう。 ねえ君。笑ってくれるか…

塩、機関銃、蝋燭

暗闇の中、蝋燭の明かりを頼りに進む。自分の足音以外の音はない。私は人だったものを破壊する。その為にここへ来たのだ。 肩から下げた機関銃が重い。借り物だ。大事に担ぎ直す。 見知った家の廊下を進む。ドアを開ける、蝋燭で照らす。その繰り返し。大き…

個体値、神社、プラスチック

気付けば、白いイチョウの木の上で脚をぶらぶら、座っていた。見下ろせば青い鳥居。地面がある筈の場所は暗く、底が知れない。見上げた空はまだ決まっていないようで、赤、青、緑と少しずつ色が変わっていく。 ここは?そう呟いたはずの声は無く、代わりに口…

太陽、街、セロハン

娘の中学の美術の授業でステンドグラスを作ることになったそうだ。 ステンドグラスとはいえ、もっと簡易なもので、黒い大きな画用紙を切り取り、間に色の付いたセロハンを貼るというものらしい。12月のマーケットに飾る予定だったのもあり、大抵のクラスメイ…

ロボット、虫、CD

真っ黒で四角い箱のような家の大きな窓の傍。そこにゆったりと椅子に座る少年が居る。ここ数日、私は彼を観察していてわかったことがあった。彼は人ではない。では何なのか。私はそれを表す言葉を知らない。ただ彼は老いた女性が持ってくる丸くて平たくてキ…

黒人、ショートケーキ、マスキングテープ

「だからね、私は黒には白だし、白には黒が似合うと思うのよ!」 突然声を張り上げた彼女の口元には、間抜けにもコッテリとした生クリームがへばりついている。黒いスポンジに真っ白な生クリームの塗られたそれを、大して美味しくもなさそうにまた口に運ぶ。…

ティッシュ、カッパ、校庭

何だか真っ直ぐ家に帰りたくなくて、図書室で時間を潰していた僕は、ふと窓の外を見た。 雪だ。そしてくるくると回る小さな影。 まだ遅くないとはいえ、高校に小さな子が来るなどと、何か理由があるのだろう。 丁度いい暇潰しだと外に出る。 校庭の真ん中辺…